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ナイチンゲールの思想

ナイチンゲールの論文を見てみますと、その歳月の中で、ナイチンゲールが一貫して抱きつづけ、関心を寄せ続けた

対象というのは、単に病者という存在ではなく、〈兵士〉と〈貧民〉と〈インドの人々〉という、きわめて具体的存在であ

ったことがうかがえます。



そしてこの三者を取り巻く状況には共通した点がありました。つまり〈1つの国民〉という社会構造の中で、彼らはい

つも下層民として存在したのです。それ故に虐げられ、結局自ら人間の尊厳を失って堕

落し、不健康な生活を送っている人々の姿が浮かび上がってきます。さらにはこうした人々の周辺には、その生命を

いとも簡単に奪っていっていまう不衛生な環境と社会機構が横たわっていました。



ナイチンゲールはこうした社会悪の根絶をめざして闘おうとしたのです。ですから兵士や貧民の置かれた状況や、彼

らが暮らす救貧院やその病院など、ナイチンゲールは詳しく調査してその実態をつかんでいったのです。



彼らの存在は〈人間とは何か〉〈生命とは何か〉〈人間はどんな生き方をしなければならないか〉というテーマを、ナイ

チンゲールに突きつけたに違いありません。それは若い頃に農民小屋の実態を見て感じたとったテーマと同じ質の

ものでした。




一方、クリミア前のナイチンゲールの生き方に多大な影響を与えたのは、身近に暮らす上流階級の人々の暮らしぶ

りとその精神構造にありました。彼女は豊かな生活を送りながらも、そうした環境に激しい嫌悪感を抱いて育ったの

です。



一人の女性としての生き方を模索した時、ナイチンゲールは自分の周囲にそのモデルがないことを嘆きました。自

分の存在を社会とのつながりにおいて価値づけようと考えた彼女は、長い苦闘の末、結局、看護という仕事を選び

取るのですが、その看護という仕事の対象となる人々の群は、英国という土壌の中で、人間の健康とはおよそかけ

離れた暮らしを営んでいた人々だったのです。ここに人間ナイチンゲールが背負い込んだテーマの大きさを見ること

ができるように思います。
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